ダイコン(夏まき)の栽培(暖地)

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1.作型の特徴

・8月下旬~9月下旬に播種し、生育日数55~65日で、10月下旬~12月に収穫する。
・適温環境下で肥大を進め、極寒期に入る前に収穫する基本的な作型である。

2.品種と作型

・夏の守(サカタのタネ):8月下旬~9月中旬播種、10月下旬~11月下旬収穫
・夏の翼(タキイ種苗):8月下旬~9月中旬播種、10月下旬~11月下旬収穫
・豊秋(カネコ種苗):9月中旬~9月下旬播種、12月~1月上旬収穫

3.畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・なるべく深く耕起(できれば30cm以上)し、砕土・整地を十分に行い、岐根、曲がり、寸づまりにならないようにする。
(2) pHの矯正と土壌改良
・ダイコンは苦土やホウ素の欠乏による生育障害を受けやすいので、土壌分析に基づいた改良を行う。
・ダイコンは酸性土壌にはやや強くpH5.3以上であれば問題ないが、pH6.0を目標に矯正する。
・有効態リン酸15~30mg/乾土100gを目標に土壌改良を行う。
(3) 土壌消毒
・センチュウ被害が予想される畑では、D-D油剤やディトラペックス油剤などで土壌消毒を行う。
・通常は、土壌線虫防除だけで十分であるが、萎黄病や根腐病などの土壌病害が発生する懸念がある場合は、クロルピクリンくん蒸剤などで土壌消毒をする。
(4) 堆肥の施用
・完熟堆肥を播種の1か月前に2t程度全面施用し、耕起する。
(5) 輪作
・アブラナ科の連作を避けるため、共通病害虫のないマメ類やイネ科の野生種エン麦や未成熟トウモロコシとの輪作を行う。
(6) 畝立て、マルチ
・この作型では、基本的には無マルチであるが、8月下旬~9月上旬播種作型では白黒ダブルマルチを利用することで発芽率が向上し,欠株が減少する。
・無マルチ栽培では、幅120cm、高さ10~20cmのベッドを形成し、条間40㎝の3条植えとし、通路幅は60㎝とする(平均畦幅60cm)。
・マルチ栽培では、幅80cm、高さ10~15cmのベッドを形成し、条間45㎝の2条植えとし、通路幅は60㎝とする(平均畦幅70cm)。

4.施肥

(1) 養分吸収特性
1) 養分吸収量
・10a当たり養分吸収量は、窒素12~30kg、リン酸4~10kg、カリ14~26kg、カルシウム6~12kg、マグネシウム1~3kgと多量であるが、ダイコンの吸肥力は強く、根を2mの深さまで伸ばして土壌養分を吸収することから、作型や土壌によっては、吸収量よりはるかに少ない施肥量が適正施肥量となる。
2) 窒素
・ダイコンの生育に最も大きな影響を及ぼすのが窒素である。
・窒素が多すぎると茎葉が徒長して直根の肥大が不良になり、少なすぎると直根の肥大が劣るばかりでなく、茎葉の耐寒性が低下したり、ス入りの発生を助長する。
・生育初期に窒素が不足すると茎葉部・根部ともに生育が遅れ、その後に窒素を十分に与えても遅れを取り戻すことができない。
3) ホウ素
・ホウ素が欠乏すると茎葉は粗剛になり、多数の側芽が発生するようになり、根部には表皮の黄化、肌がざらつくサメ肌症状、縦横の亀裂、赤心などの症状が現われる。
・生育初期から中期にかけてホウ素が不足すると根部肥大が不良になり、肉食がアメ色になる。
4) マグネシウム
・マグネシウムが欠乏すると下葉の葉脈間が黄化し、しだいに上位葉に及び、その後落葉する。
・欠乏症状は、厳寒期に根部の肥大盛期をむかえる作型で発生しやすい。
(2) 施肥
・施肥位置に根群が集まる性質があるので、元肥は畝全体に混合しておくと側根は水平に広く分布し、主根の生長も良好になる。
・基肥は、播種7日前に全面施用し、深耕しておく。
・施肥量は、基肥で窒素12kg、リン酸15kg、加里12kg程度施用する。追肥で窒素2kg、加里2kg程度を2回施用(2回目は収穫の20日前までに終わらせる)する。
・ダイコンはホウ素欠乏による赤芯症や肌あれ、亀裂が出やすいので、上記の施肥に併せてFTEを4kg/10a(ホウ素として0.2~0.3kg以内)施用する。ホウ素資材とともに過リン酸石灰を施用するのもよい。

5.は種

(1) は種方法
・無マルチにおける株間は30㎝(条間40cm)、マルチ栽培では27㎝(条間45㎝)程度とする。
・ダイコンは多粒まきした方が発芽率が向上し、根を土中に深く伸ばすことができ、その後の生育もよくなるので、1穴当たり3粒は種し、間引きを行う。
・は種深度は1.5cm~2.0cmを目安とし、は種後に軽く鎮圧する。

6.管理作業

(1) 除草
・植え穴付近の除草は間引き時に手取りで行い、通路部分は生育中期にホー除草を1回行うことで収穫までの雑草繁茂を防げる。
・除草処理は、は種後約30日ころまでに終わらせ細根を傷めないようする。
(2) 間引き
・間引きは、本葉2~3枚時に2本立てに、6~7枚時に1本立てにする。
・間引きでは、生育不良株、子葉の奇形、病害虫による被害株、葉色の濃い株、生育が特に旺盛な株を取り除く。
(3) 生育判断
・生育のごく初期に、子葉が小さく葉色が極端に濃い場合は、基肥の窒素が多すぎると考えられる。
・正常な生育をしている場合、外側から10枚前後の葉が最も大きく、内側に向かってだんだん小さくなる。
・過繁茂の場合、外側から15~20枚の葉が大きく、両側に向かって小さくなる。

7.主な病害虫と生理障害

・注意を要する病害虫は、軟腐病、黒腐病、キスジトビハムシ、ネグサレセンチュウ、ネキリムシ類などである。
・注意を要する生理障害は、亀裂褐変症、空洞症、ス入りなどである。

8.収穫

(1) 収穫適期
・は種後の生育日数(は種後55~65日前後)を目安に、す入りの前に収穫する。
・収穫前後に、必ず肉質調査を行い、肥大、品質状況を確認しながら適期収穫につとめる。
(2) 収穫方法
・ダイコンの肌は、打撲やこすり摩擦を与えると品質が低下するので注意する。
・洗浄後、時間がたつと鮮度が落ちるので冷蔵貯蔵する。