ミョウガの栽培(暖地)

GAPであなたの農業経営を変えてみませんか?

Ⅰ.基本特性

1.分類と形態的特性

(1) 分類
・ミョウガは、ショウガ科ショウガ属に属し、全国いたるところの山すその庇蔭地に自生し、古くから栽培されている宿根性の多年草である。
(2) 地上部
・生育適温は21~23℃で草丈、葉数とも著しい増加が見られ、生育最盛期には5~6日で1枚の出葉が認められる。
・地上部は耐寒性が弱く、霜に1~2回あうと枯死倒伏するが、地下茎はかなりの低温に耐える。
・本葉12~13葉期(越年株)以後に出蕾・開花する。時期別では、夏ミョウガが6月下旬~7月、秋ミョウガが8~9月に出蕾し、夏ミョウガでも1年株は、9月上中旬以降の出蕾となる。
(3) 地下茎
・地下茎は低温に強く、土壌が凍結する場所でも越冬可能である。
・地温が15℃前後になると地下茎の先端の頂芽が発根し、萌芽が始まる。
・萌芽時期は、気温や日長などの気象条件によって早晩があり、通常、4月上旬~5月中旬ごろである。
・ミョウガは地下茎で繁殖する作物で、根茎は株を中心に50cm四方以上に広がり、一度植えつけると長期にわたって収穫が可能となる。
・地下茎には、花蕾を発生させる根茎と、発生させない地下茎があり、花蕾を発生させない茎の先端にある頂芽が萌芽し、その基部から数本の地下茎が発生し繁殖する。
(4) 花芽分化
・本葉が7~8枚程度になると花芽分化が起こるとされ、12~13枚で出蕾しその後開花するが、生理については不明な点が多い。
・関東の平坦地では、夏ミョウガで6月上~下旬、秋ミョウガで6月下旬~7月中旬頃に花芽が分化する。
(5) 休眠
・ミョウガには休眠があり、花蕾発生後、日長が短くなると地下茎の自発休眠が始まり、10月~11月にかけて休眠が最も深くなる。
・その後、地温が下がるにつれて休眠が徐々に覚醒するが、地温が上昇しないために萌芽しない強制休眠期がしばらく続く。

2.生育上の外的条件

(1) 温度
・生育適温は20℃~23℃で、14~15℃以下では生育が著しく阻害され、30℃以上になると草勢が弱まる。
・地下茎はかなり耐寒性があるが、地上部は耐寒性が弱く、霜にあうと枯死・倒伏する。
(3) 光
・ミョウガは半陰性の植物で、午前中日光が当たり午後は日陰になるような光環境が望ましく、強光下では葉枯れ症状のような障害が現れ地上部が枯れることがある。

3.品種

・品種分化は進んでおらず、地方の在来種がそのまま品種になっている。
・群馬県の陣田早生の系統選抜である陣田1号、2号、3号の利用が多い。
・収穫の季節により、早生種は夏ミョウガ、晩生種は秋ミョウガとして出回る。

Ⅱ.栽培技術(花ミョウガ)

1.作型

・ミョウガの栽培は、大きく分けて、開花前に地下茎の先端に形成された花序(花蕾)を収穫する花ミョウガ栽培と地下茎から出た幼茎を軟白させるミョウガタケ栽培に分けられる。
・作型としては、露地栽培のほか、ハウスのよる半促成や促成栽培がある。

2.畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・腐植の多い埴土~埴壌土で、保水性、排水性のよいほ場が適する。
・夏期の乾燥には弱いことから、水持ちの良いほ場が好ましい。
(2) pHの矯正と土壌改良
・適pHは5.5~6.8と幅が広い。
・定植20日以上前までに堆肥や土壌改良材を施用し、土壌改良しておく。
(3) 輪作
・作付け後、長年自生させて収穫することもできるが、連作をすると根茎腐敗病が発生しやすくなるので、輪作を行なうことが望ましい。

3.施肥

(1) 基肥
・1年目の植え付け前に、堆肥や鶏糞など肥効の長い資材を土壌全面に施用する。
・2年目以降は、茎葉が倒伏した冬期間(12月中旬~3月下旬頃)に基肥を施用し、緩効性主体に窒素成分を5kg/10a程度施用し、その後敷き草を行う。
(2) 追肥
・1年目は、活着後速やかに窒素成分で5kg/10a程度施用する。
・2年目以降は、花蕾分化後の6月中下旬に窒素成分を5kg/10a程度施用する。

4.植え付け

(1) 栽植密度と必要根株量
・地下茎苗を利用する場合、畦幅60㎝×株間15~20㎝(頂芽の間隔)とし、3~4芽つけた根株を2条植えし、5~10㎝程度覆土する。必要根株は、10a当たり200kg程度である。
・間引き苗を利用する場合、畦幅60㎝×株間15~20㎝の1条植えとする。
(2) 植え付けの方法
・地下茎苗を利用する場合、種茎(地下茎)は無病で充実したものを選び、新芽を3~4つつけて15~20cmに切り、株間15cmに2列に目を上にして植える。植付けの時期は、通常、秋植え(11中下旬)するが、凍結のおそれのあるところでは地下茎の活動前の春植え(2月下旬~4月上旬)とする。
・間引き苗を利用する場合、4~5葉開いたものを活着の良い梅雨期(6月中旬~7月上旬)に植え付ける。
・覆土は5~10cmとし、定植後、乾燥防止や、品質向上を目的に敷き草を行う。

5.管理作業

(1) 落葉の敷き込み
・植え付け後、萌芽する前に、乾燥や雑草の発生を防止するために落葉の敷き込みを行なう。
・また、晩秋~春の萌芽前に、花蕾の着色促進を目的に、畑前面に均一(厚さ3~5cm程度)に敷き込む。
・敷込み材としては、ナラやクヌギなどの広葉樹の落ち葉が最良であるが、スギやカヤなどの針葉樹でもよく、大量の落ち葉が手に入らない場合は、稲わらや麦わら、バーク堆肥などで代用する。
・敷き込み量は、資材によっても異なるが、10a当たり3~6t程度が必要となる。
(2) 除草
・ミョウガの萌芽前に除草剤を散布する。その後発生する雑草は生育に大きく影響を及ぼすので、手取り除草する。
(3) かん水
・春先~初夏に乾燥する場合はかん水を行い、敷込んだ落ち葉が常に湿度を保つようにする。
(4) 間引き
・ミョウガは、定植後2~3年すると地下茎や茎葉が込みあい、光線の射し込み不良により、地温の上昇が遅れ、花蕾の生育と着色が不良になり、品質・収量が低下してしまう。この状態を防ぐために、間引きを行なう。
1) 茎間引き
・茎間引きでは、花芽分化後の本葉6~7葉期に1m2当たり茎葉が60~100本程度になるように行なう。
・生育が旺盛な本葉5葉期以前(花芽分化前)に間引くとかえって偽茎の発生が旺盛になり、収量・品質が低下してしまうので注意が必要である。
・茎間引きした茎で強いものは繁殖用苗として利用可能で、梅雨期であるため活着も良くなる。
2) 畦間間引き(地下茎間引き)
・3月中旬~4月上旬に、畦の中で幅120cmを残し、40cm幅地下茎を掘り取り、これを繰り返す。
・この方法で行うと、ほ場内に40cm幅の通路が確保され、掘り取った畦間は3年程度でふさがるので、順次間引き場所をずらし、4年くらい行うと全面の地下茎を更新することができる。

6.主な病害虫と生理障害

(1) 病害
・注意を要する主な病害は、根茎腐敗病(ピシウム菌)、葉枯病、白星病、いもち病などで、特に根茎腐敗病は発生すると収穫が皆無となるので、十分な注意が必要である。
(2) 害虫
・害虫は少ないが、ハダニ類、コガネムシ類、ヨトウムシ、アワノメイガ等に注意する。

7.収穫

(1) 収穫適期
・出蕾は、主茎葉12~13葉期ごろからが始まるり、花蕾が充分に肥大し、花苞が3~4枚先端に固く締まった状態になった時が収穫適期であり、花が開かないうちに収穫する。
・一般的な収穫時期は7中旬~10月上旬で、半促成や促成栽培を組み合わせて周年の収穫・出荷も可能である。
・収穫の始めころは3日に1回くらいの収穫割合だが、最盛期には毎日収穫し、花蕾の斉一化を図る。
・なお、本格的な収穫は2年目からである。
(2) 収穫方法
・根ぎわから切りとり収穫する。
・収穫されたミョウガは、水洗い、水切りを行ってから出荷規格に沿って選別を行う。
・通常は100g入りポリ袋やパッカーに詰め、段ボール箱に入れ保冷出荷する。
・収穫は手作業であり、調製とともに最も労力のかかる作業である。

Ⅲ.栽培技術(ミョウガタケ)

1.栽培の特徴

・ミョウガタケはミョウガの葉鞘部分を軟白し、薄紅色に色づけしたものである。
・ミョウガは、冬季の約2カ月間の休眠後、春になって休眠が破れると、株から新しい芽が出てくるが、この芽を軟化して葉鞘部分に光を当て、紅色をつけるとミョウガタケとなる。
・ミョウガタケ栽培には、一般に根茎の発達が旺盛で、良品が収穫できる秋ミョウガ(晩生)を用いる。
・この秋ミョウガを用いて、根株の掘り上げ、軟化床で軟白化と紅付けを行う。

2.根株の養成

(1) ほ場の選定
・連作を避け、根茎腐敗病の発生していないほ場を選ぶ。
・やむなく病害発生が認められた畑で栽培せざるを得ない場合は、土壌消毒を行う。
(2) 施肥
・種株の肥料焼けを防ぐために定植の1カ月以上前に、化成肥料(窒素成分で5kg/10a程度)で施肥を行う。
・萌芽後、草丈が15cm位になったときに1回目、その後1か月後に2回目の追肥(窒素成分で3~4 kg/10a程度)を行う。
(3) 植え付け
・種株は、根が太くてふっくらと充実した無病のものを選び(10a当たり250kg)、長さ30cmじゅらいに切り離しておく。
・75~80cmの畦を作り、溝に60㎝間隔で1か所に3~4本の根株を芽の向きが上になるように並べていく。
・並べ終わったら、10cm程度覆土する。
(4) 管理作業
・第1回目の追肥の時に、除草を兼ねて中耕・培土を行う。
・梅雨明け後、乾燥防止と地温上昇抑制を目的として、株元に敷わらをする。
(5) 根株の掘り上げ
・株の掘り上げは、年が明けて休眠が覚めてから、新芽が動き出す前に掘り上げる。
・伏せ込みするまでは、根株の乾燥を避ける。
・養成畑では、400kg/10a程度の根株収量が見込まれる。

3.伏せ込み栽培

(1) 伏せ込み床づくり
・伏せ込みする場所は、採光性がよく、かん水しやすい場所を選ぶ。
・床上1mくらいを完全に遮光できるようにする。
(2) 伏せ込み
・芽の伸びる方を上に向けて、半分程度重ねるようにして並べる。
・並べ終わったら、萌芽まで株が乾かないように5㎝程度の覆土を行うか、切りワラをかけてかん水する。
・かん水量は15~20㍑/㎡を10日間隔で行う。
・暗黒を保ち、15~20℃程度で管理する。
(3) 紅付け
・伏せ込み後、15日くらいすると萌芽が始まり、芽の長さが3cmと10cmになったら、紅付けを行う。
・紅付けでは、間接光を5時間くらい当てる。
・2回目の紅付けで、ミョウガタケの葉鞘部分に色がついてくる。
(4) 紅付け後の管理
・紅付け後は、再び暗黒条件に戻し、ときどきかん水し、温度を20~25℃に保ちながら50cm程度まで伸ばす。
(5) 収穫
・芽長が50~60cmで紅色の葉鞘部分がはっきり見えるようになったら収穫適期である。
・地際から刈り取って収穫する。
・出荷規格に従い、22㎝程度の長さに切りそろえ、紅色がきれいにそろうように並べて出荷する。
・伏せ込み量によって異なるが、600~750kg/a程度の収穫量が見込まれる。
・調製には多大な労力が必要で、1人1日当たり30kg程度である。