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1.作型の特徴
・播種が12月下旬~3月中旬、収穫が4月上旬~5月下旬で、初期に花芽分化を誘発する低温期間が含まれ、栽培期間中に気温が上昇する作型となる。
・ダイコンの花芽分化は種子感応性であるので、トンネルやマルチを早めに準備して地温を上げておくとともに、播種から生育初期にかけて保温し、その後は保温と換気をうまく行い徒長させないように管理する。
2.品種と作型
・品種は、晩抽性で低温伸長、肥大性が優れるものを用いる。
・1月以降の播種では根長が伸びすぎない品種を選ぶ
・早生ながはる(中原採種場):1月中~2月下旬播種(トンネルマルチ、べたがけマルチ)、4月中旬~5月中旬収穫
・春宴(雪印種苗):1月上~1月下旬播種(トンネルマルチ)、4月中~4月下旬収穫
・春宴(雪印種苗):2月上~2月下旬播種(べたがけマルチ)、5月上~5月中旬収穫
・早生ながはる(中原採種場):3月上~3中旬播種(マルチ)、5月中旬~5月下旬収穫
3.畑の準備
(1) 適土壌と基盤の整備
・なるべく深く耕起(できれば30cm以上)し、砕土・整地を十分に行い、岐根、曲がり、寸づまりにならないようにする。
(2) pHの矯正と土壌改良
・ダイコンは苦土やホウ素の欠乏による生育障害を受けやすいので、土壌分析に基づいた改良を行う。
・ダイコンは酸性土壌にはやや強くpH5.3以上であれば問題ないが、pH6.0を目標に矯正する。
・有効態リン酸15~30mg/乾土100gを目標に土壌改良を行う。
(3) 土壌消毒
・センチュウ被害が予想される畑では、D-D油剤やディトラペックス油剤などで土壌消毒を行う。
・通常は、土壌線虫防除だけで十分であるが、萎黄病や根腐病などの土壌病害が発生する懸念がある場合は、クロルピクリンくん蒸剤などで土壌消毒をする。
(4) 堆肥の施用
・完熟堆肥を播種の1か月前に2t程度全面施用し、耕起する。
(5) 輪作
・アブラナ科の連作を避けるため、共通病害虫のないマメ類やイネ科の野生種エン麦や未成熟トウモロコシとの輪作を行う。
(6) 畝立て
・低温期の播種作型では、地表が軽く乾いた条件で耕うんした方が気相が多くなり地温が上昇しやすくなる。また、日中に耕うんした方が土壌水分が少なくなり、地温が高くなりやすい。
・マルチ栽培では、幅80cm、高さ10~15cmのベッドを形成し、条間45㎝、株間35㎝の2条植えとし、通路幅は60㎝とする(平均畦幅70cm)。
・低温期の播種作型でのトンネル栽培では、地温を高めやすくするため60cm幅程度の小うねにした方が良い。
・うね方向は、生育を揃えるためにはうね方向を南北にした方が良い。東西うねの場合は、中央から南半分と北半分とで地温差が生じるので、それを防ぐために、マルチ表面をなるべくフラットにする。
(7) マルチ
・前半の播種作型では、保温性を高めるために透明マルチを用い、後半の播種作型では、地温上昇と雑草抑制を兼ねてグリーンマルチを用いる。
・マルチの植え穴の孔径(穴径)も小さいほどマルチ内の温度が逃げにくく、根部の肥大促進や空洞症の発生防止につながる。孔径は4cm程度とする。
4.施肥
(1) 肥料の吸収特性
1) 養分吸収量
・10a当たり養分吸収量は、窒素12~30kg、リン酸4~10kg、カリ14~26kg、カルシウム6~12kg、マグネシウム1~3kgと多量であるが、ダイコンの吸肥力は強く、根を2mの深さまで伸ばして土壌養分を吸収することから、作型や土壌によっては、吸収量よりはるかに少ない施肥量が適正施肥量となる。
2) 窒素
・ダイコンの生育に最も大きな影響を及ぼすのが窒素である。
・窒素が多すぎると茎葉が徒長して直根の肥大が不良になり、少なすぎると直根の肥大が劣るばかりでなく、茎葉の耐寒性が低下したり、ス入りの発生を助長する。
・生育初期に窒素が不足すると茎葉部・根部ともに生育が遅れ、その後に窒素を十分に与えても遅れを取り戻すことができない。
3) ホウ素
・ホウ素が欠乏すると茎葉は粗剛になり、多数の側芽が発生するようになり、根部には表皮の黄化、肌がざらつくサメ肌症状、縦横の亀裂、赤心などの症状が現われる。
・生育初期から中期にかけてホウ素が不足すると根部肥大が不良になり、肉食がアメ色になる。
4) マグネシウム
・マグネシウムが欠乏すると下葉の葉脈間が黄化し、しだいに上位葉に及び、その後落葉する。
・欠乏症状は、厳寒期に根部の肥大盛期をむかえる作型で発生しやすい。
(2) 施肥
・施肥位置に根群が集まる性質があるので、元肥は畝全体に混合しておくと側根は水平に広く分布し、主根の生長も良好になる。
・基肥は、播種7日前に全面施用し、深耕しておく。
・播種期によって、収穫までの生育日数が大きく変わるので、生育温度に応じた肥培管理を行なう必要がある。窒素施用量は12月までは10a当たり15kg、1月は10kg、3月は8kg程度とする。
・ダイコンはホウ素欠乏による赤芯症や肌あれ、亀裂が出やすいので、上記の施肥に併せてFTEを4kg/10a(ホウ素として0.2~0.3kg以内)施用する。ホウ素資材とともに過リン酸石灰を施用するのもよい。
5.は種
(1) は種方法、
・低温期の播種では、地温を上げやすくするため株間はやや広めの35cm程度とする。
・低温期の播種では、抽苔を少なくするため、土壌水分の少ない時に耕うん・播種した方が良いが、この条件で発芽を確保するため、播種深度は3cm程度とし、3粒以上播種する。
6.管理作業
(1) 除草
・植え穴付近の除草は間引き時に手取りで行い、通路部分は生育中期にホー除草を1回行うことで収穫までの雑草繁茂を防げる。
・除草処理は、は種後約30日ころまでに終わらせ細根を傷めないようする。
(2) 間引き
・晩抽性品種は一般に異形株の発生率が高いが、4葉期以前では異形株が判別しにくいので、間引きは、本葉5~6枚時の1回ですます。
・間引きでは、生育不良株、子葉の奇形、病害虫による被害株、葉色の濃い株、生育が特に旺盛な株を取り除く。
(3) べたがけ資材による保温
・抽台防止と抽根部の寒害防止を目的に、不織布のべたがけを行う。
・11月下旬~2月まきでは、播種直後から気温が低く、抽台する危険性が最も高い作期である。昼温を高めて脱春化効果を高めるため、播種直後からべたがけをし、トンネルも密閉管理をする。
・べたがけを行なう際には、葉や抽根部が露出しないよう、うね幅の倍程度以上の幅の資材を用いる。生育の初期にはだぶついてしまうので、マルチ表面が陰にならないよう、余分な部分はベッドの片側(東西うねなら北側)に寄せておく。
・裸地の地温は日照時間や日射量の影響を受けて秋から冬にかけて低下するので、1月下旬までの播種作型では、厚みがあり空気層の多い、断熱性の高い資材を選ぶ。
・2月以降の播種作型では、透明度(透光性)の高い資材を選ぶとよい。べたがけ資材は一重トンネルであっても、凍害が発生しなくなる2月下旬以降には除去する。
・べたがけ資材の除去は、5日ほど前から換気を多めにしてダイコンを外気に慣らし、晴天日の午後または曇天日の日中に取り除く。天気予報に注意を払い、強い寒気がくる前に除去することは避ける。
(4) トンネル被覆による保温
・トンネルは全体を覆うよう、ベッド幅が90cmの場合、幅240cm、厚さ0.01mmのフィルムを用いる。
1) すそ換気を行う場合
・保温性の高いトンネル資材である無孔の農ビフィルムを使用する。
・生育初期は30~35℃、中期は25℃、後期には20℃を目標に開閉作業を行なう。
・は種直後からトンネルを敷設する作型で、最初に換気する場合、東西畦なら南端、南北畦なら東端を5m間隔くらいすそをまくり、夕方冷えてきたら閉めて冷気を入れないようにする。ダイコンの生育が進むにつれて、すそまくりを多くし、換気率を高めていく。
・換気は本葉10枚頃から始め、生育に伴って徐々に多めにしていく。
・は種直後から低温による花芽分化が発生しやすい時期では、保温により花芽分化の回避に努めるが、生育中期(抽根開始期)以降は蒸しこみすぎると葉勝ちになり、根の肥大が遅れるため、換気が遅れないよう注意する。
・すそ換気を行う場合は、被覆資材は2年使用できる(古い被覆資材を使用すると光線透過率・昇温効果が低いためにダイコンの生育が遅れたり、早期抽台する場合があるので注意が必要である)。
2) すそ換気を行わない場合
・開孔率1.5%の農ポリフィルム(ユーラックカンキ2号など)を利用することで、すそ換気を省略する。
・穴あきのフィルムを使うと夜間の冷込みが強く、生育相が1週間くらい遅れる上、被覆資材も1年で廃棄する必要がある。
3) トンネルの除去
・トンネルの除去時期は、早すぎると寒害を受ける危険があり、逆に遅すぎると茎葉が繁茂して根部肥大が妨げられたり、抽根部の着色が不良になったりする。
・トンネルフィルムは、外気温が0℃を超えて寒害の発生する危険がなくなる頃に除去する。
7.主な病害虫と生理障害
・この作型で問題になる病害虫は、黒斑細菌病、コナガ、アブラムシなどである。
これらの被害を防止するために、べたがけ資材を被覆する前に一度薬剤散裂布をしておくとよい。
・注意を要する生理障害は、空洞症、岐根、裂根、曲がり、ス入り、側根の肥大などである。
8.収穫
(1) 収穫期の管理
・被覆の除去時期は、早すぎると寒害を受け、遅すぎると花芽分化後の花茎の伸長を早めてしまう。
・抽根部や葉の痛みを防ぐため、一度にべたがけとトンネルの両方を除去せず、外部環境に慣らしながら行なうようにする。
・気象条件にも配慮しながら、べたがけは3月上旬、トンネルは3月下旬までには除去する。
・トンネル除去を行なう場合は、1週間前ころから日中は完全にビニールを取り、寒さが厳しい夜は再びかける作業を3~4日行なって馴化するとよい。
(2) 収穫適期
・一般に、収穫期に達するまでの生育日数は、11月下旬播種で130日、12月下旬播種で120日、1月下旬播種で100日、2月下旬播種で85日程度である。
・収穫期は根重で1~1.2kgのころであるが、急激に肥大する4~5月どりはいっせいに収穫することになる。
・収穫前後に、必ず肉質調査を行い、肥大、品質状況を確認しながら適期収穫につとめる。
(3) 収穫方法
・ダイコンの肌は、打撲やこすり摩擦を与えると品質が低下するので注意する。
・洗浄後、時間がたつと鮮度が落ちるので冷蔵貯蔵する。