チンゲンサイの栽培

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Ⅰ.チンゲンサイの概要

1.チンゲンサイの導入

(1) 栽培面での特徴
・本来は、冷涼な気候での栽培に適していることから、春期栽培では抽苔性(開花)が、夏期栽培では収穫物の品質低下が問題である。
・夏期栽培では、節間伸長が顕著に現れる。
・夏に形状がまとまる品種、チップバーンなどの生理障害の発生の少ない品種が要望されている。
・栽培面でのポイントは、早春まきにおける抽苔、夏期の暑熱対策に注意し、マルチ等により土壌水分の確保を図ることである。
(2) 経営面での特徴
・全国的に作付面積、生産量とも増加傾向にある野菜である。

2.来歴

・アブラナ科野菜の原産地は、地中海沿岸とされているが、チンゲンサイはそこから分化した植物が中国に伝わり、華中・華南地域で発達し誕生して根付いたと推測されている。
・チンゲンサイは結球しないツケナ類「小白菜」に分類され、中国では古くから栽培され、現在も長江流域では多様な栽培型のチンゲンサイ等の小白菜が多く栽培されている。
・日本へは、1972年の日中国交回復以降いろいろな中国野菜が入ってたが、中でもチンゲンサイは味や食感が日本人の好みに合い人気を得た。
・その際に、軸の色が青いものと白いものの2種類があり、それぞれ「青茎(青軸)パクチョイ」、「白茎(白軸)パクチョイ」などと呼んでいた。
・1983年に現在の農林水産省が、軸が青いものは「チンゲンサイ(青梗菜)」、白いものは「パクチョイ」と命名した。
・その後、中国野菜ブームに乗って広く普及し需要が年々増加し、中国野菜の中心的な野菜となった。

3.分類と形態的特性

(1) 分類
・アブラナ科アブラナ属の野菜である。
(2) 根
・チンゲンサイの根は細かく深く張るので、耕土が深く有機質に富んだ肥よくな土壌が適する。
(3) 花芽分化と抽苔
・吸水した種子が13℃以下の低温に10日以上あうと花芽分化して、その後の高温と長日条件で抽苔が促進される。
・たねまきから本葉5枚ころまで最低気温7~10℃、日平均気温15℃以上を確保する必要がある。

4.生育上の外的条件

(1) 温度
・発芽適温は20~25℃、生育適温は昼間20~25℃、夜間8~10℃である。
・耐暑性、耐寒性が強い野菜だが、冷涼な気候を好む。
・5℃では生育が遅延し、-5℃以下では表皮がむけるなどの低温障害が発生する。
・最高限界温度は35℃である。
(2) 光
・強い光を好み、光合成の光飽和点は8.5万ルクスである。
・ただし、夏季の晴天時には気温を低下させるために弱い遮光をしても、生育の妨げにはならない。
(3) 土壌
・保水力のある土では株張りがよく,品質のよいものをつくることができる。
・乾燥土壌では生育が停滞し、高温が加わると様々な生理障害が発生する。

5.品種

・北海道で作られているチンゲンサイの主な品種は次のとおりである。
(1) 青美(サカタ)
・「青帝」より若干晩生だが尻部の張りはよく、首部は早期からよくしまり、きれいな形になる。
・葉はやや大きく、濃緑色でテリがある。
・葉軸は濃緑で肉厚になり、スジが非常に少ない。
・周年栽培が可能だが抽だいが「青帝」よりさらに安定しており、低温期の葉軸の伸びもよいので、10月~3月の低温期の播種に適している。
(2) ニイハオ新1号(渡辺農事)
・やや立性で草丈は中程度、葉は楕円形で、葉・葉柄とも緑が濃く、葉数が多くボリューム感がある。
・高温期の節間伸長が少ないうえカッピング、チップバーンに非常に強く、軟腐病にも強い。
・夏まき種としては抽苔が遅く、高温期に伸び過ぎず、3月から10月まで連続して栽培できる。
(3) 春賞味(武蔵野種苗園)
・葉色・葉柄色ともに濃く丸葉で、草姿や株張り、形状のまとまりの良いやや短脚の品種である。
・春期栽培でも大株にならず、荷姿がきれいにまとまる。
・4月上旬から6月上旬播種において、最も品種特性を発揮する。

6.作型

・北海道での主な作型は次のとおりである。
(1) ハウス
・2月上旬~10月中旬は種、3月上旬~11月中旬定植、4月上旬~12月中旬収穫
(2) 露地
・4月上旬~8月上旬は種、5月上旬~8月下旬定植、6月上旬~10月中旬収穫

Ⅱ.チンゲンサイの栽培技術

1.育苗

(1) 育苗容器
・288穴程度のセルトレイを使用する。
(2) 種まき
・播種後、タネが隠れる程度にバーミキュライト等で軽く覆土する。
(3) 発芽
・播種後3~4日で発芽し、子葉が開いてくる。
(4) 播種後の管理
1) かん水
・発芽までは、乾燥させないようにかん水を行う。
・発芽後は、土の表面が白く乾いたらかん水するようする。
2) 温度管理
・移植栽培は、圃場の都合や低温期の花芽を遅らせるために行う。
・低温期はトンネルやべた掛けなどの保温対策をとって抽苔を回避する。
3) 定植までの管理
・育苗日数は20日程度である。
・定植の1週間ほど前からは、定植圃場の条件に合うよう、徐々に温度を下げて苗をならしていく。

2.定植準備

(1) 畝立て、マルチ
・耕うん後ベッド幅90~150cm、高さ10~20cmの畝をつくり平らにならしておく。
・通路は30~60cmほどとる。
・マルチ栽培は生育促進、泥はね防止に効果が高い。
・低温期は透明マルチを使用して、地温を確保するように努める。
・高温期は白黒ダブルマルチやシルバーマルチを利用すると、地温が低下して節間伸長を予防し、雑草防除になる。
(2) 栽植密度
・高温期やハウス栽培では17~20cm×17~20cm、低温期や普通栽培では12~15cm×12~15cmの条間、株間で栽培する。
・株間が広いほど、チンゲンサイの特徴である尻部の肥大が確保しやすくなる。
・夏場は、密植になると節間が伸びることがあるので注意する。
(3) 堆肥
・堆肥の施用効果が高いので、完熟堆肥を十分に施す。

3.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 窒素
・北海道においては、総窒素施用量(施肥窒素+堆肥由来窒素)が15kg/10aまでは増収効果が認められるが、窒素の増肥と共に調製株の硝酸塩濃度が高まることや、作物に利用されなかった余剰窒素が増えることから、12~15kg/10a程度が望ましい。
・府県では、連作条件下においてチンゲンサイの生育は作付前の土壌中無機態窒素と施肥窒素の合計量が20mg/100g乾土以上で抑制されることから、施肥窒素量をこの値から作付前の土壌中無機態窒素を差し引いた値を上限としている例もある。
2) リン酸
・リン酸施肥は夏作14kg/10a、春、冬作は20kg/10a程度がよい。
3) カリ
・カリ施肥は夏作10kg/10a、春、冬作は14kg/10a程度がよい。
(2) 施肥設計
1) 考え方
・栽培期間が短いので元肥中心とする。
・10a当たり窒素、リン酸、カリそれぞれ12~15kgを標準とする。
・高温期は少なめに、低温期は多めに施用する。
・連作回数や生育により施肥量を加減する。
2) 施肥設計(例)

 区分 肥料名 施用量(kg/10a) 窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
基肥 NS262 100 12.0 16.0 12.0 0.2
合計 100 12.0 16.0 12.0 0.2

 

4.定植

(1) 苗の状態
・定植床に害虫等を持ち込むと防除が困難になるので、定植2~3日前に薬剤防除を実施する。
(2) 播種(直播の場合)
・露地栽培では早まきをするほど抽だいの危険性が高くなるので、平均気温が13℃以上になってから播種した方がよい。
・直播の場合、点まきは1穴に3~4粒まきとし、スジまきではできるだけ薄くまく。

5.管理作業

(1) 温度管理
・低温期は最低気温12℃以上を確保し、最高気温は24~25℃を目安に十分換気を行う。
・高温期は、温度低下を図るため遮光率30%程度の資材で遮光する。
・遮光資材はかけすぎると葉色が薄くなるので、こまめな管理を行う。
(2) かん水管理
・やや湿り気のある土の方がよく生育するので、乾燥しやすい土壌の場合は、こまめにかん水管理を行う。
・夏期は肥料分を抑え気味にし、かん水時間などに注意して葉身部分が伸びすぎないよう管理する。
(3) 被覆
・夏場の栽培では、寒冷紗トンネルを利用すると、病害虫の発生が少なく、品質のよいものがとれる。
・虫害の被害が少なくなる秋まきでは、生育促進を目的に不織布をベタがけする。
(4) 間引き(直播の場合)
・本葉3~4枚ごろまでに1本仕立てになるように間引く。
・生育の悪い、葉色が濃いもの、草勢の強すぎるもの、徒長したものなどを間引き、残した株の大きさが揃うようにすることがコツである。
・間引き後は、残した株の根元に土寄せをする。
(5) 中耕・土寄せ
・中耕は雑草を抑えると同時に、土をやわらかくし、通気性をよくするために行う。
・土寄せは株元の除草と、胚軸部が風で動いて傷ついたり、曲がったりするのを防ぐために行う。
(6) 追肥
・生育期間が短いので、原則として追肥は行わない。
・ただし、生育の状態をみて葉色が淡い場合などは、窒素やカリを10a当たり2kg程度施用する。

6.主な病害虫と生理障害

(1) 病害
・北海道において注意を要する主な病害は、白さび病、軟腐病、根こぶ病、べと病などである。
(2) 害虫
・北海道において注意を要する主な害虫は、アブラムシ類、キスジノミハムシ、コナガ、ヨトウガなどである。
(3) 生理障害
・主な生理障害は、チップバーン、ホウ素欠乏症などである。

7.収穫

(1) 収穫適期
・1株100~150g程度での収穫が一般的で、高温期は播種後35日、低温期では80日程度で収穫適期の大きさになる。
(2) 収穫方法
・葉数12~14枚、草丈20~25cm程度になった株を包丁などで地際から切りとり、開いた外葉を2~3枚取り除いて箱詰めする。
・高温期は鮮度が落ちやすいので、収穫後予冷をして出荷する。