カリフラワーの栽培

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Ⅰ.カリフラワーの概要

1.カリフラワーの導入
(1) 栽培面での特徴
・茎葉の生長の盛んな株は大きな花蕾を形成する。
・栽培面でのポイントは活着と初期生育を促進し、花芽分化までに葉数を十分確保することである。
(2) 経営面での特徴
・消費量は多くないが常時少量必要な品目で、音更町と伊達市など道内の主要産地ではブロッコリーとセットで栽培している場合が多い。

2.来歴

・カリフラワーはアブラナ科アブラナ属の一年草または二年草で、栽培キャベツの野生型でヨーロッパの西部や南部の湾岸地方に自生し、地中海東部沿岸が原産地とされている。
・まず、ケールが、数千年前から栽培されるようになり、続いてブロッコリーがイタリアを中心に発達し、そのブロッコリーが改良されて、今日のカリフラワーが生じたとされている。
・しかし、17世紀初めにはまだ両者の区別はなく、カリフラワーは18~19世紀にヨーロッパで急速に品種が発達して普及し、19世紀になってからアメリカやアジアに伝わったとされる。
・わが国へは、明治の初めに導入されたが、暖地の千葉、静岡、山口、九州でわずかに栽培されたに過ぎず、一般には普及しなかった。
・カリフラワーが急速に普及したのは1965年以降で、食生活の変化、緑黄色野菜に対する栄養価の評価などにより消費が増加し、1971年には野菜の上位20位内へ入るまでに成長した。
・しかし、その後は食生活の洋風化とともに消費は減り、代わってブロッコリーが急増したため、1989年には農林統計からカリフラワーが姿を消し、代わってブロッコリーが登場するようになった。

3.分類と形態的特性

(1) 分類
・アブラナ科アブラナ属に属する野菜である。
(2) 根
・根は主根が細く比較的短いが、支根は多くかなり伸びる。
・根系は浅く広く横に60cm、深さ20cm位の範囲にほとんどが分布している。
・深い根は150cmくらいまで伸び、根の構造は木部組織の発達が著しく、吸水力が強いことから耐干性は強い方である。
・高温と過湿に弱く根腐れや生育不良、土壌病害の誘引を起こしやすい。
(3) 茎葉
・茎葉の生育適温は日中20~25℃、夜温10~18℃である。
・本葉4枚位までは子葉の役割が特に重要なため、育苗中や移植時など傷つけないよう管理することが大切である。
・外葉は10~20枚でやや開帳性であり、内葉は10~15枚の立性で未展開葉は花蕾を巻き込む性質がある。
・最近の品種は芯葉の花蕾被覆がよく、外葉をしばって軟白する必要がないものが多い。
(4) 花と果実
・花蕾原基の段階で蕾の発育が停滞するため、花蕾は極小さく白色で茎の肉質食感を持っている。
・花芽原基は主枝ばかりでなく一次、二次分枝を形成して急激に増加し花蕾を作る。
・その後、発育して花梗を伸長させ、開花結実して種子を生産する。
(5) 花芽分化
・植物体がある一定の大きさに達して低温を感じ、一定の低温に遭遇すると花芽を分化する緑体春化型(グリーンバーナリゼーション)である。
・一般に極早生種で低温感応する苗サイズは5葉以上、感応温度は約23℃以下である。

4.生育上の外的条件

(1) 温度
・種子の発芽は10~35℃で生育幅が大きいが、適温は20~25℃である。
・発芽直後の根部伸長は4~38℃で、26℃を適温としている。
・茎葉の生育適温は20~25℃、夜温10~18℃である。
・花蕾の発育適温は15~18℃で25℃以上で発育が停止する。
・高温、低温とも葉数や葉面積、根重の低下をもたらす。
・凍害を受ける温度は1℃以下で、長く低温が続くと花蕾は暗褐色化しやがて腐敗する。
(2) 水分
・根が広範囲に分布することから、やや乾燥気味の方が良質の花蕾ができる。
・過湿には弱いので水田転換畑等では特に排水に留意する。
(3) 光
・長日の方が葉の分化や葉面積、地上部や地下部の生育が良くなるが、花蕾発育は短日の方がよくなる。
(4) 土壌
・耕土は深くて有機質の富んだ圃場が望ましい。
・酸度には敏感に反応しpH6.0~6.5が適する。
・極端な粘質土や砂土は生育に適さない。

5.品種

・北海道で作られているカリフラワーの主な品種は次のとおりである。
(1) スノークラウン(タキイ)
・適期栽培で定植後約70日で収種できる早生種。
・草姿はやや開帳性で草勢旺盛、耐病性強く栽培が容易である。
・花蕾は均斉のとれた純白の大玉(直径16cm、花蕾重850g内外)で肉厚く、花蕾が緻密に緊まり秀品率が高い。
・温度に対して鈍感で春作でのボトニングの懸念も少なく、収穫期の幅は広い。
(2) バロック(サカタ)
・定植後75日前後で収種できる早生種。
・草姿はやや開張、草丈低くコンパクト、葉は厚く丈夫で風に強い。
・花蕾は小花蕾の時から固くしまり、純白で極ち密、とくに厚みがある。
・重さ900g内外、パラケが遅く収穫適期幅が広い。
・花蕾内部のアントシアン(紫色)はほとんどない。
(3) 美星(サカタ)ミニカリフラワー
・定植後70日前後で収穫できる耐暑性にすぐれた早生品種。
・草姿が非常にコンパクトで、密植栽培に向いている。
・包葉性が強く、純白のごく緻密な花蕾で重量感がある。
・直径10cm程度(350g)の花蕾で収穫すると最も特性を発揮する。
・高冷地や北海道で6月下旬~10月いっぱいまで出荷が可能で、とくに耐暑性にすぐれるため8月出しでも高品質花蕾が生産可能である。
・生育初期での低温には敏感で、ボトニングに注意する必要がある。
1) 美星の栽培ポイント
① 葉枚数(展開葉で20枚程度)を確保しつつ、株をコンパクト(草丈約50~60㎝程度)につくる。
② 低温に敏感で、若いステージ(本葉4枚程度)でも低温にあうと花芽分化を起こすおそれがあるので、必要葉枚数を確保するまではできるだけ低温などのストレスを与えない。
③ 通常のカリフラワー品種に比べ、肥料を2~3割程度少なくする。
④ 60cm×25cm(6,660本/10a)を標準とする。
⑤ 包葉性が強すぎて収穫適期がわかりにくい場合がある。とくに高温時の収穫では花蕾の肥大が早いのでとり遅れに注意する。
(4) ブライダル(サカタ)
・包葉性にすぐれる中早生種。
・草姿はやや立性で葉は黒緑色の大型で包葉性に優れ、生育がきわめて旺盛で栽培しやすい品種である。
・花蕾は純白で厚く、緻密で品質がよい。
・肥大性が良好で重さ900g程度に揃う。
・低温に鈍感で早期出蕾(ボトニング)しない。

6.作型

・北海道での主な作型は次のとおりである。
(1) 露地(春まき~初夏まき)
・3月中旬~7月上旬は種、4月下旬~7月下旬定植、6月下旬~10月下旬収穫

Ⅱ.カリフラワーの栽培技術

1.育苗

(1) 発芽
・発芽を均一にするため地温(20~25℃)を確保する。
・播種後は十分かん水し、発芽まで乾燥させないように管理する。
(2) 定植までの管理
・発芽後は日中20~25℃で管理し、夜間は5℃以下にしない。
・かん水は徒長させないよう夕方には床土の表面が乾く程度に行い、保温と換気に注意する。
・育苗後半の肥料切れによる発根力の低下を防ぐことがポイントである。
・天候不順で定植できない場合はかん水制限を行い、5℃で低温貯蔵し天候の回復を待つ。

2.畑の準備

(1) 適土壌と基盤の整備
・春まき栽培では生育が低温期に当たるため、早めに畑の準備を行う。
・カリフラワーは湿害に弱いので、排水のよい畑を選ぶとともにサブソイラー等による硬盤の破砕や高畦栽培など排水対策を積極的に行う。
(2) 堆肥の施用
・養分吸収量の多いカリフラワーには、堆肥施用の効果が大きい。

3.施肥

(1) 肥料の吸収特性
1) 総論
・養分吸収は定植後20日目ころから急速に多くなり、花蕾発生時に最も多くなる。
2) 窒素
・窒素が少ないと規格内収量の低下、花蕾にアントシアンが発生するなどのリスクが高まる。
・窒素が多すぎると茎葉の過繁茂や花蕾の緩み、花蕾腐敗病や軟腐病の発生を助長するなどのリスクが高まる。
・適正窒素施肥量は、現行の施肥標準量であるN18kg/10aが妥当と考えられる。
・窒素は生育初期から花蕾形成期間中を通して不足しないよう施肥することが重要であり、特に出蕾後に不足させないために追肥時期が遅れないよう注意する。
3) リン酸
・リン酸は生育初期に不足すると栄養成長が抑えられ、ボトニングが発生しやすくなる。
・リン酸は生育初期に必要で、流亡が少ないため全量元肥で施用する。
4) カリ
・カリは吸収量が最も多く花蕾が分化発育する初期にとくに必要であり、生育後半に不足しないよう追肥が必要である。
・出蕾期~花蕾形成中に必要で、出蕾始めと出蕾揃いには葉面散布をしてもよい。
5) その他の要素
・ホウ素とモリブデンの欠乏症が主体である。
・ホウ素欠乏症は葉の中肋内部に横に小さな亀裂を生じたり、花蕾の枝内に空洞を生じ肥大不良や品質低下の誘引になる。
・また症状が著しい場合には、成長点部が褐変したり葉縁が裏面に反転する。
・中性から微アルカリ性の土壌ではホウ素が不可給態になって欠乏症発現の要因になり、またカリの多用によりホウ素との拮抗作用によって欠乏が誘発される。
・モリブデン欠乏症は、酸性土壌で発生しやすい。
・症状は葉が非常に細長くなる鞭状葉やコップ状葉、芯止まり、花蕾の肥大不良となる。
(2) 施肥設計
1) 考え方
・花芽分化後にカリが不足すると花蕾肥大が極度に悪くなり、またホウ素欠乏も起こしやすいので、早期追肥やホウ素入り肥料の利用を心掛ける。
・定植後は、生育初期~中期の肥切れに注意する。
・特に窒素とリン酸不足は生育抑制を招き収量が不安定になるので、適量施肥を行って充実した株にする。
・追肥は通常、定植2週間後と花芽分化期に行う。
・活着後の生育促進が大切で、速効性肥料を用い頂花蕾出現までに根張りを十分にして、花蕾形成期以後の出蕾までは肥効をやや抑える。
・生育後期の肥料切れは花蕾の正常発育を阻害したり、低温によるアントシアニン(紫色素)の発色をより強めたりするので、草勢を落とさない栽培管理が必要である。
・春まき栽培では栄養成長と生殖生長が並行して行われるため基肥を主体とした施肥とし、窒素とカリの30%を分施する。
・施肥量は10a当たり堆肥2tのほか窒素18~20kg、リン酸15~20kg、カリ18~20kgが基準であり、前作や畑の肥沃度により加減する。
・極早生種は生育期間が短いので、全量基肥とし外葉を早期に繁茂させることが大切である。
・低温期の生育に当たる春まき栽培では、株を大きくつくるため元肥の比率を上げ、一方高温期の生育に当たる夏まき秋どりでは、元肥の比率を下げ生育の状況に応じて追肥で調節するようにする。
・過剰な施肥は、花蕾の形の乱れや病気の誘発につながるなど品質低下を招きやすい。
・有機質を多く施し、根の発育を促して健全な生育をさせる。
2) 施肥設計(例)
春どり

 区分 肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
基肥 NS262 130 15.6 20.8 15.6 ・硝酸態窒素含量が高い
・ホウ素含有
・定植後20~25日頃までに追肥する
追肥 S444 30  4.2  1.2 4.2 1.5
合計 160 19.8 22.0 19.8 1.5

夏どり

 区分 肥料名 施用量
(kg/10a)
窒素 リン酸 カリ 苦土 備考
基肥 NS262 90 10.8 14.4 10.8 ・硝酸態窒素含量が高い
・ホウ素含有
・定植後20~25日頃までに追肥する
追肥 S444 50  7.0  2.0 7.0 2.5
合計 140 17.8 16.4 17.8 2.5

4.定植

(1) 栽植密度
・低温期65cm×35~38cm(4,050~4,400株/10a)、高温期65cm×42~45cm(3,420~3,660株/10a)程度を標準とする。
(2) 苗の状態
・小苗や徒長苗は発根力が弱いので、途中で予備苗と差し替えて均一な苗生産を心掛ける。
・セル苗育苗では、本葉2.5~3.5枚の若苗で定植するように心がける。
・天候不順で定植できない場合は、事前のかん水制限、追肥と5℃の低温貯蔵で対処する。
(3) 定植の方法
・早春定植の露地植えは平均気温が10℃以上になったころを目安とし、それより前に定植する場合にはマルチや不織布など被覆資材を使用する。
・早春に定植する場合は、子葉が隠れる程度の深植えとする。

5.管理作業

(1) 中耕・除草・培土
・活着後、追肥と除草を兼ね中耕を行う。
・中耕を行うことで降雨後に硬くなった土を軟らかくし、通気性が良くなり根の伸長を促す。
・カルチ時は茎葉を折らぬよう、高温期は定植20日後以内とする。
・雑草は外葉が通路をふさぐまで除草剤をなるべく使わず、カルチで抑える。
・最終の中耕を行うときは、培土刃を用いて土寄せを行い株の倒伏を防ぐ。
・いずれの場合も、茎葉を損傷したり断根しないように注意する。
(2) 追肥
・追肥量は、ブロッコリーよりやや多く、窒素成分で10a当たり4~6kgを基準とし、泥炭土や十分な降雨がある場合は20%程度減肥する。

6.主な病害虫と生理障害

(1) 病害
・北海道で注意を要する病害は、軟腐病、黒腐病、べと病などである。
(2) 害虫
・北海道で注意を要する害虫は、アブラムシ類、オオモンシロチョウ、コナガ、モンシロチョウ、ヨトウガなどである。
(3) 生理障害
・主な生理障害は、花茎空洞症、不整形花蕾、ヒュージー、ブラインド、ブラウンビーズ、ホウ素欠乏、ボトニング、モリブデン欠乏、ライシー、リーフィーなどである。

7.収穫

(1) 収穫適期
・多肥栽培などで株を作りすぎると抱擁性が強くなり、収穫適期がわかりにくくなる。
・特に高温期は花蕾の肥大が早いので、取り遅れに注意する。
(2) 収穫方法
・高温期収穫の花蕾は日光が当たると黄変しやすいので、外葉の一部を取って花蕾を被覆して防ぐ。